いつだったか
猫を拾った時
私は はしゃいでいた

「可愛いネコと出会ったのだ」と
独り上手な想いに酔って
家路を急いだ

あくる日には
私は親に半ば強引に諭されて
猫を捨てに行った

その時の私は
単純に理解の無い両親に
腹を立てて
拗ねて
泣いたのを覚えている

その時の私の心の中では
猫は二の次だったのかも知れない


いつだったか
猫を拾った時
私は勘違いをしていた
「可哀想だから」と
センチメンタリズムに酔って
知識も持ち合わせずに連れ帰り
親に隠れて育てようとした

次の日には猫は冷たくなっていた

その時の私は
自分に同情していた
「温もりを知らずに死なせるのは残酷過ぎるから」と
自分が手にかけた命の重さを
何処かで減らそうとしていた
その時の私の心は言い訳で満たされ
猫の事など二の次だったのかも知れない


いつだったか
猫を見捨てた事がある
箱の中には三匹

親も無く
自分を守る力も方法も持たず
徹底的に生きる術の無い
そんな彼らを
私は何の感慨も無く見捨てたのを
覚えている

彼らを救いたい自分と
彼らの命に無闇に関わらなかった事を安堵する自分と

そのどちらが本心で
そのどちらが欺瞞なのか
そこにどれ程の意味も無く
分かったのは
自分は弱者を見捨てる事が出来るという事実だけ

その時の私は考えもしなかったのだろう
猫を自分の立場の違いにどれ程の差分も無く
タイミングと運が悪ければ
次は自分がそうなってしまう事を

そうした出会いが
何度もあった

私は大人になり
出来るだけの知識と
それを行使するだけの金を持つ事が出来るようになった

しかし私はそこから何も学び取れていない

その命に責任を持てず
悪戯に振り回し 殺し
捨てた人間に唾を吐き
社会に悪態を吐いては
また欺瞞でこり固めた自分を許す

そんな自分に反吐が出る

呼び声がどこから聞こえて来るのか
判らないほど
この夕暮れが暗ければと
本気で祈った日々を

無関係でいる事も
向き合う事も
出来ない
身奇麗でいられないのを知っていて尚
汚れる事を恐れ続け
願わくば他人の手で解決すればと望む

そんな中途半端な自分を
私は未だ引き摺っている